文化・芸術・クリエイティブ実験室 / 上野・浅草 / WEB/IT/インバウンド
おはようございます!ブックキュレーターの永田です。
平日の朝は上野公園のカフェテラスで読書が日課です。実はテラス越しに通り過ぎていく藝大生たちを眺めていると、不思議な人からいかにもって人まで多種多様な人がいてとても気になっていました。
二宮さん!ありがとうございます!これを読んで疑問が少し晴れました。そして、藝大や芸術との距離が少し近くなった・・・気がします。。
作者の奥さんが藝大生!
そこからこの物語は出発します。奥さんとの生活の中で考えられないやりとりが多々あり、彼にとってそれはとても新鮮で驚きがありました。当の奥さんの「それってそんなに珍しいことなの?」というテンションに、作者は別世界に生きる人の気配を感じたようです。
特にユニークだと感じたのは美校と音校のコントラストです。
音校に行く生徒たちは、爽やかだったり、清楚だったり、表情も明るく芸能人の様なオーラを放っているのに対して、美校に行く生徒たちは、真っ赤な唇、モヒカンや蛍光ズボン、びりびりとした自己表現をする学生や、一方で、ボサボサ頭に上下ジャージなどまるで外見に気を使っていない学生もいると藝大のカオスな様子を紹介しています。
物語は各タイトルごとに数人の藝大生のインタビューが掲載され一話完結型になっています。
ここまで藝大を調べてきて、どうしても気になることが出てきた。
確かに藝大生は凄い。音へのこだわりには舌を巻くし、日々身に着けている技術も到底真似ができない。
だけど、それって社会で役に立つのだろうか?
卒業してから、たべていくことができるのだろうか?
純粋に僕も卒業後どんなことをしているの?って凄く気になっていましたが、どうやら芸術家としてやっていけるのは一握りの人だけ。
本当に厳しい世界ですね。
何年かに一人、天才が出ればいい。他の人はその天才の礎。ここはそういう大学なんです。
ある学生が入学時に学長にこんなことを言われました。
そして驚いたのは、就職する人は、いわゆる負け組、芸術をあきらめた人たちだということ、これもつらい・・・
「普通の世界と離れ過ぎちゃうんです。もっと世の中の仕組みを勉強したくて。アーティスト以外の人とも、繋がらないと・・・」
芸術家になりたいと思って藝大に入ったこの学生。その頃から心境に変化があり、今では起業したいと考えるようになっていました。
「まだはっきりとは決めていませんが、アーティストとアーティストを、人と人を繋げよるような。アートする場所を提供したいです。私が自分で作品を作るのではなく、一歩下がったところからサポートしたいんですよ」
本人はまだイメージが漠然としているような発言ですが、ここまでやりたいことが見えているなら後はもう動くだけじゃないかなぁと思いました。自分の持つ問題意識や方向性がはっきり見えて、人に説明できることは、ほんとうに凄いと思います。ビジョンをきちんと人に説明することはとても難しくて、出来ない人がとても多いんですよね。
書店のポップに藝大生の半分以上が卒業後行方不明になる!と書いてあり釣られて購入しました(笑)実際読んでみると、内容は面白おかしく書かれてるというよりも、純粋な学生たちの想いが込められた書籍だと感じました。藝大の持つ「カオスな世界」と学生たちの芸術に対する「純粋なエネルギーと想い」が、この一冊にぎゅ~っと詰まっていました。
見どころは冒頭でも述べましたが、音校と美校のコントラスト。
芸術に対する姿勢は双方とも真摯かつ貪欲なのですが、音校の生徒さんはどこか優雅で必死な「アタックNO1」のような世界、美校の生徒さんはジャングルの中でたくましく生きている野生児!?たちの桃源郷、そんな世界が道路を挟んで隣同士にある。そこを行き来することで天才たちのキャラクターや背景のコントラストが浮き出てきます。
「藝大は芸術界の中の東大」「東大は学問界の藝大」どちらの表現がより適切か?本書にも書かれていましたが、藝大、東大、いづれにしても、頂点にある狭き門をくぐるのは生半可なことではないと思います。この本に登場する学生たちは、だれもがその門をくぐり抜けてきた猛者たち。そんな猛者たちの話は尖りきっていてとてもおもしろいです。
普通の人たちが真似しようと思っても到底真似出来ない世界、尖りきったカオスな芸術の世界を少し覗いてみたい好奇心旺盛な方におすすめの一冊です。
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